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【取材ノート】「そうであるのかないのか」

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昨年末、ある医療関係の研究会を取材した。
病院や施設でやむを得ない処置として行われる患者に対する「抑制」の廃止を目指す「抑制廃止研究会」の21回目になる大会だ。
「抑制」とは、病室で暴れたり点滴を抜くなどの危険行為をする患者の手を縛ったり、手にミトンをつけさせたりする身体拘束だけでなく、「ベットから動いてはダメ!」と言葉による強要やセンサーマットによる患者の管理もそれに含まれる。
抑制は介護分野では法律で明確に禁止されているが、医療分野では法制化されていないことが問題だとも同研究会は指摘する。

現実には一時的な抑制を容認しないと医療行為そのものがムダになるケースも多いことから、急性期医療の病院では「抑制」をなくすことは難しい。だが、同研究会に所属する病院の中には、様々な工夫で「抑制ゼロ」を実現しているところがある。
大会ではそのような病院の看護部長らが抑制をなくすためのノウハウや組織の在り方について発表した。

500人を超す参加者の大半は女性で、看護師が多い。発表者がパワーポイントでさまざまな事例を紹介する中、点滴につながれ拘束された状態で入院した患者が拘束を解かれたことで自立歩行し元気に退院する動画が映し出されると、思わず涙をぬぐう参加者の姿が多く見られた。
日本の医療の根っこの部分は、たぶんこうした優しい人たちの良心で担われてきたのだろう。だが、この先もそれが保証されるかどうかわからない。

一方、研究会の事務局にはこのような問い合わせが頻繁に来るのだという。
「うちの病院では〇〇〇をしているのですが、これは抑制にあたりますか、抑制ではありませんか?」と。
これに似たフレーズをよく耳にする。
「これはいじめか、いじめではないのか?」「これはパワハラか、パワハラではないのか?」
自分の行為を何かしらの権威に定義づけてもらいたいというムード。答えを得て安心し、旗色を見てツィート内容(自分の意見)を決める責任回避の発言者たち。かく言う私もそのなかの一人だ。

医療技術の向上や医療従事者個人の良心にゆだねるべき問題ではない。医療に関わる倫理の問題は社会全体で議論すべきだが、そのための哲学教育が今、欠けている。
令和2年は哲学的な視座も意識しつつ、書いていきたい。(和田)
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