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【映画は思考する Vol.2】 ミフネ

ミフネ

 人間が愚直に生きることを選んだときに逆説として立ち現れる、悲しいペーソスとでもいえばいいか。そんな質感をもったこっけいさがあふれている。
 舞台はデンマークのコペンハーゲン。会社の仕事ぶりが認められて、社長の娘を妻にした野心家のクレステン(アナス・ベアテルセン)だが、結婚式の夜に突然、実父の訃報がもたらされる。新妻を残し、故郷の田舎町に帰った彼を待っていたのは、知的障害者の兄、ルード(イエスパー・アスホルト)だった。自活できない兄のためにクレステンが出したハウスキーパーの募集広告を見て、経歴を隠した美女、リーバ(イーベン・ヤイレ)がやって来る。彼女の弟も呼び寄せられ、それぞれの事情を抱えた四人の奇妙な共同生活が始まる。
 まず、深刻な話なのに冒頭の常軌を逸した過激なセックスシーンから度肝を抜く。見る者の想像力を裏切るように見事にはぐらかされるストーリー展開と、のどかな田舎風景のはざまに挿入される笑いの連打。そしてクレステンら三人を振り回すルード役、アスホルトの強烈でいて、じつに自然な存在感が、この映画を息づかせている。
 ところで、タイトルの『ミフネ』とは、あの三船敏郎なのだが、ここではクレステンが、黒澤明監督『七人の侍』で三船が演じた「サムライ」のまねをしてルードを鼓舞させる仕掛けとして登場する。つまり、あくまでも三船ではなく、世界の共通認識となった記号としての「トシロー・ミフネ」が形而上の小道具に用いられているのだ。この演出がなければ、何か決定的に物足りない映画になっていたことは間違いない。そこに救われた。(今西)

1999年デンマーク
監督:ソーレン・クラーク=ヤコブセン
出演:アナス・ベアテルセン、イエスパー・アスホルト、イーベン・ヤイレ



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